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Systematic Review

Barriers and Facilitators to Interprofessional Work in Clinical Settings in Japan: A Systematic Review of Qualitative Research

[version 1; peer review: awaiting peer review]
PUBLISHED 20 May 2026
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OPEN PEER REVIEW
REVIEWER STATUS AWAITING PEER REVIEW

This article is included in the Japan Institutional Gateway gateway.

Abstract

Background
Interprofessional work and collaboration (IPW) are considered essential to address increasing healthcare demands driven by workforce shortages and the growing prevalence of multimorbidity. However, IPW has not been fully implemented in clinical practice in Japan, and no systematic review has comprehensively synthesized the barriers and facilitators to its implementation. This study aimed to identify barriers and facilitators to IPW in Japanese clinical settings using an implementation science framework.
Methods
We conducted a systematic review of Japanese-language qualitative studies published since 2004 that explored barriers and facilitators to IPW. Searches were performed in Ichushi-Web, CiNii Articles, and J-STAGE. Two reviewers independently screened titles/abstracts and full texts. All narratives and codes related to barriers and facilitators of IPW were extracted from the included studies and mapped to the 14 domains of the Theoretical Domains Framework (TDF). 
Results
Of 5,051 records identified, 34 qualitative studies were included. A total of 736 narratives and codes were mapped to TDF domains. Frequent barriers were identified in the domains of Environmental context and resources (e.g., time constraints, workforce shortages, limited communication tools), Social influences (e.g., hesitation to contact others, avoidance of conflict), and Social/professional role and identity (e.g., professional hierarchies and unclear roles). Facilitators often addressed these issues. In the Social influences domain, facilitators were more frequently identified than barriers, with consideration for others, respect for collaboration, and efforts to maintain harmony commonly reported. Fewer narratives were mapped to domains related to internal personal factors (e.g., knowledge, behavioural regulation, emotions).
Conclusions
This study indicates that IPW in Japan is strongly influenced by structural constraints, professional hierarchies, and a collectivist culture emphasizing harmony and conflict avoidance. Future interventions should incorporate behavior change techniques targeting these barriers and be evaluated for their effectiveness using implementation science approaches.

Keywords

Interprofessional Collaboration, Health Care, Qualitative Research, Systematic Review, Theoretical Domains Framework, Communication Barriers, Japan

Introduction

高齢化社会による医療人材の不足や多疾患併存症の増加に伴う患者の健康ニーズの複雑化が医療における 大きな課題となっており,単一の専門職のみで臨床上の問題を解決することは困難となっている.1 その ため,患者中心のケアにおいて効果的かつ患者満足度が向上する多職種連携 (Interprofessional Work; IPWまたは Interprofessional Collaboration; IPC) が近年重要視されている.2,3 IPW とは「異なる専門分野の複数の医療従事者が患者,家族,介護者,コミュニティと連携して最高品質のケアを提供すること」と定義される.4 IPW は病院・在宅医療におけるケースカンファレンスやチームミーティングなどの形で実施され,IPW を通して異なる専門分野の医療従事者が情報を共有し,治療が共同で設計される.5,6 IPW は患者の入院期間の短縮といった臨床アウトカムだけでなく,医療従事者のケアの質および心理的安全性をも向上させる効果があるとされている.79 日本国内において IPW は高齢化社会における在宅医療・福祉サービスを充実させる文脈で注目されているが,実践・実装の不十分さが指摘されている.10,11 具体的には急性期においては専門職間で IPW に対する意識に大きな差があり,地域においては在宅医療に関わる医療者と介護・福祉関係者間の IPW の実施率が極めて低いことが課題となっている.12,13 日本国内の IPW を促進するために IPW の阻害要因および促進要因に関する多数の質的研究が実施されており,阻害要因として威圧的な雰囲気,多忙,遠慮,職種間の能力差の認識などが多数挙げられており,一方で促進要因として自由に意見交換ができる風土,相互傾聴等が挙げられている.14,15しかし,これら質的研究で特定された IPW の阻害・促進要因は介入設計につながる形で体系的整理されていない.近年,臨床における患者や医療者の行動変容を促すことを目的に実装科学の手法を用いて阻害要因および促進要因を構造的に整理し,介入化する研究が報告されている.16,17 実装科学とはエビデンスにもとづく介入やプログラムが現場の文脈においてどのように実装されるか,またそのプロセスや結果に影響を与える要因は何かを体系的に明らかにする研究領域である.18 効果の有無だけではなく,どのようにすれば実装できるのかに焦点を当て現場への定着を目的とする点に特徴がある.19 とくに保健医療の分野においては,科学的に効果が示された介入であっても現実には十分に導入されていないエビデンスと実践のギャップの解消にこの実装科学が有効とされている.19 具体例として,Rankin らは高齢者における不適切なポリファーマシーの是正を目的とした介入を開発するために,医師の処方行動を行動変容の対象として先行研究をレビューし,医師の処方行動に関連する要因を Theoretical Domains Framework (TDF) を用いて阻害・促進要因に整理している. TDF は実装科学の個人の行動変容に関する心理学理論を統合して開発された,人の行動に影響を与える要因を包括的に分析するための 14 の理論的ドメインからなるフレームワークである.20,21 Rankin らは先行研究から医師の適切な処方行動の阻害・促進要因を特定しそれらを各 TDFドメインに分類している.その後それら TDF ドメインに対応すると考えられる行動変容技法を体系的に選定し,それらを新たな介入に組み込んでパイロット研究を実施し実行可能性や医療者への受容性を確認している.22,23 この実装研究の手法を用いてIPWの実践・実装を阻害および促進する要因を検討した研究はない.また,日本を含む東アジアでは役職,年齢,性別,職業にもとづくヒエラルキーが看護師の発言に影響し,その中でも日本では年齢が高い者への敬意が深く根付いていることが IPW へ影響する可能性があると報告されている.2426 したがって,日本の文脈で IPW の阻害・促進要因を検討する必要がある. 本研究では日本における IPW の阻害・促進要因に関連する質的研究の知見をスコーピングレビューによって特定した上で,それらを TDF 上にマッピングすることで阻害・促進要因を体系的に整理することを目的とした. 本研究によって IPW の実装を促す介入設計が将来的に可能となる.

Methods

本研究は PRISMA-ScR guideline および Joanna Briggs Institute (JBI) マニュアルに従い作成され,27,28 プロ トコールは Open Science Framework (OSF) に事前に登録されている.29

目的

スコーピングレビューによって特定された質的研究の知見を TDF にマッピングし統合することで,日本の医療・介護・福祉領域における IPW の阻害要因と促進要因を実装科学の視点から明らかにすること.

対象文献

Review question:日本における医療・介護・福祉領域における IPW の阻害要因と促進要因は何か.

Participants:日本国内の臨床現場で IPW に携わる医療・介護・福祉専門職および支援員,事務職員.

Phenomenon of interest: IPW に関する促進要因と阻害要因. 特に IPW の実践において生じる制度的・心理的・文化的・構造的な阻害要因や促進要因に焦点を当てた.

Context: 日本国内の医療・介護・福祉の現場での IPW.

Types of evidence sources: 学術誌に掲載されている日本国内における臨床現場での IPW を対象とした質的研究の原著論文(例:半構造化インタビュー,フォーカスグループ,参与観察,ナラティブ分析,エスノグラフィ,混合研究,記述的研究,ケーススタディ,導入報告書).

適格基準

Inclusion criteriaExclusion criteria

  • 日本語で記載され,学術誌に掲載された原著論文であること

  • 日本国内の臨床現場における複数の異なる専門職で実施する IPW であること

  • 医療・介護・福祉専門職(例:医師,看護師,リハビリテーション専門職,医療ソーシャルワーカー,ケアマネジャーなど)を研究参加者とした研究であること

  • 質的研究または混合研究のうち質的部分が明確に抽出可能なものであること

  • IPWの阻害要因および促進要因に関する語りやテーマを含むこと

  • 医療や介護,福祉の臨床現場における実践を対象としていること

  • 教育現場の多職種連携教育 (IPE) のみを対象とした文献

  • 日本国外で実施された研究あるいは研究参加者が日本国外の医療従事者のみである文献

  • IPWではなく単一専門職内の連携を主題とする文献

  • 組織間の連携に関する文献

  • IPW に関する言及が限定的な文献(例:内容が医療安全等に限定され,連携に関しては言及されていない)

  • 特定の状況でのIPWに関する文献(例:災害時, 保健行政,就労支援,組織マネジメント)

  • 抄録のみ,会議録,意見論文,自己出版,学会発表要旨など,一次研究としての妥当性を欠く文献

  • IPWの促進要因および阻害要因に関するデータがない文献

  • 単に IPW の実施に焦点を当てている文献

  • 質的データが報告されていない,明確な分析結果が提示されていない文献

検索方法

検索式は図書館司書の支援のもと設計され,JBI が推奨する 3 段階のアプローチに従った.28 最初に,2 つの主要データベース(医中誌 Web および CiNii Articles)で本研究のテーマに関する検索を実施して,特定された文献のタイトルおよび抄録に含まれる単語をもとに関連するキーワードと統制語を特定した.二次検索として,特定されたすべてのキーワードと統制語を用いて検索式を作成し,医中誌 Web,CiNii Articles,J-STAGE を用いて検索を実施した. 使用した検索式を 表1 に示す.三次検索としてスクリーニング後にレビューに採用された文献の参考文献リストをもとに追加の文献を調査した. 検索期間は 2004 ~ 現在とし,医中誌 Web,CiNii Articles,J-STAGE の最終検索日はそれぞれ 2025 年 10 月 6 日,2025 年 8 月 19 日,2025 年 8 月 21 日であった.

表1. 各データベースにおける検索式.

医中誌((((専門職間人間関係/TH) or (チーム医療/TH) or (多部門連携/TH) or (地域社会ネットワーク/TH) or (多機関医療協力システム/TH) or (多職種連携/TA) or (IPW/TA) or (‘医療従事者-患者関係’/TH)) not (専門職連携教育/TH)) and ((((質的研究/TH) or (インタビュー/TH) or (半構成的面接/TH) or (動機付け面接/TH) or (フォーカスグループ/TH)))) and (((阻害要因/TA) or (促進要因/TA) or (障壁/TA) or (要因/TA) or (課題/TA) or (経験/TA) or (認識/TA) or (意識/TA) or (態度/TA))) and ((保健医療従事者/TH)))
CiNii Articles(("介護*" OR "保健*" OR "医療*" OR "福祉*" OR "地域医療*" OR "地域包括ケア*") AND ("医療従事者*" OR "医療職*" OR "看護師*" OR "医師*" OR "患者*" OR "家族*" OR "多職種*" OR "他職種*" OR "チーム医療*" OR "地域ネットワーク*" OR "地域リハビリ*" OR "地域連携*" OR "地域看護*" OR "介護者*" OR "病院*") AND ("共同意思決定*" OR "シェアードディシジョンメイキング" OR "SDM" OR "医療協力*" OR "interprofessional*" OR "IPC" OR "IPW" OR "IPE" OR "multidisciplinary" OR "MDT" OR "協働*" OR "連携*" OR "collaboration" OR "teamwork") AND ("質的研究*" OR "実証研究*" OR "qualitative" OR "インタビュー*" OR "面接*" OR "フォーカスグループ*" OR "focus group" OR "ナラティブ*" OR "narrative" OR "エスノグラフィ*" OR "ethnography" OR "参与観察*" OR "participant observation" OR "グラウンデッドセオリー*" OR "grounded theory") AND ("阻害*" OR "促進*" OR "バリア*" OR "障壁*" OR "課題*" OR "要因*" OR "経験*" OR "認識*" OR "意識*" OR "態度*" OR "barrier*" OR "facilitat*" OR "enabler*" OR "perception*" OR "attitude*"))
J-stage ( fulltext: (介護 OR 地域包括ケア OR 地域医療 OR 医療現場 OR 病院 OR 福祉 OR 保健)) AND ( fulltext: (医師 OR 看護師 OR 患者 OR 家族 OR 医療従事者 OR 介護者 OR 家族 OR 行政 OR 役所 OR 薬剤師 OR 理学療法士 OR 作業療法士 OR リハビリ OR ソーシャルワーカー OR 公衆衛生 OR 管理栄養士 OR nurs* OR doctor* OR physician* OR pharmacist* OR physiotherap* OR occupational therap* OR rehab* OR social worker* OR dietitian*)) AND ( fulltext: (多職種 OR 他職種 OR 連携 OR チーム医療 OR interprofessional OR "interprofessional collaboration"~3 OR IPW OR IPC OR IPE OR "team care"~5)) AND ( fulltext: (質的研究 OR インタビュー OR 面接 OR 面談 OR "フォーカスグループ" OR qualitative OR interview~1 OR "focus group" OR narrative OR ethnograph* OR "grounded theory")) AND (fulltext: (阻害 OR バリア OR 障壁 OR 課題 OR 促進 OR facilitator* OR barrier* OR enabler* OR perception~1 OR attitude*)) AND dtcitation: [2004 TO 2025]

研究の選択

検索結果はシステマティックレビューのオンラインプラットフォームである Rayyan (https://www.rayyan.ai/)にインポートされた.一次スクリーニングとしてタイトルと抄録をもとに全ての特定された文献の適格性が 2 人の査読者 (SKとTK) によってスクリーニングされた. 採用された文献および一次スクリーニングにおいて採用か不採用か不明であった文献に対してフルテキストレビューが二次スクリーニングとして実施された. これらスクリーニングに関して査読者間で合意が得られない場合,第三の査読者 (KO) の決定に従った.フルテキストレビューで除外された文献は除外された理由が報告された.

データ抽出

Microsoft Excel で標準化された抽出フォームを使用して,2 人の査読者 (SK と TK) が最終的に組み入れた文献から下記のデータを抽出した.29

  • 書誌情報:著者名,発表年,研究実施地域

  • 文献種類:原著論文,ケーススタディ,記述的報告,プログラム導入報告など

  • 研究参加者情報:参加者の職種,経験年数,所属施設の種類 (病院,在宅,介護施設など)

  • 研究デザイン:質的研究(例:質的内容分析,KJ 法,テキストマイニング等)または混合研究

  • データ収集方法:インタビューの種類(例:構造化インタビュー,フォーカスグルー等)

  • 分析手法:使用された質的分析手法(例:内容分析,SCAT,GTA,テーマ分析)

  • 語りおよびコード: IPW の阻害要因および促進要因に関する語りおよび最も語りに近い一次コードまたは一次カテゴリ等 (語りがなくコード化後のカテゴリ,テーマ,概念のみがある場合は最も語りに近い下位の概念を抽出した)

質的研究の信頼性評価

本レビューでは質的研究の質を評価するため Critical Appraisal Skills Programme (CASP) ツールを用いて,各研究の目的・デザイン・方法・データ分析・解釈・結果といった領域を評価した.30,31 全10項目で構成されており,各項目は完全に満たされている場合に「1」,部分的に満たされている場合に「0.5」,適用不可・記載なしの場合に「0」と採点された.スコア 9 ~ 10 を高品質,7.5 ~ 9 を中程度品質,7.5 未満を低品質と定義した.31

データの統合

本研究では日本の IPW に関する質的研究から阻害要因および促進要因に関する質的データを抽出した. 各文献の結果または考察のセクションにおいて提示されている研究参加者の語りおよびその語りに最も近い下位の概念のコードまたはカテゴリを1つのデータとして抽出した. 1 つの研究から複数の阻害要因および促進要因のデータが抽出され,それぞれを独立した質的データとして扱った. 抽出された各質的データがIPW に対する阻害要因または促進要因に該当するかの判定は,文献における記載の文脈および SK の解釈にもとづいた. その後,抽出された各質的データを TDF の各ドメインに分類した. 本研究では以下の 14 ドメインで構成されている TDF を用いた; Knowledge, Skills, Social/Professional Role and Identity, Beliefs about Capabilities, Optimism, Beliefs about Consequences, Reinforcement, Intentions, Goals, Memory, Attention and Decision Processes, Environmental Context and Resources, Social Influences, Emotion, Behavioural Regulation (表2).20 どの TDF ドメインへマッピングすべきか不明瞭な場合は,Huijg らによる TDF の質問項目を参照した.32 このマッピングは SK が実施し,TK が内容の妥当性を確認した.

表2.

Theoretical Domains Framework (TDF) における各ドメインの定義 (Huijg JMら).

ドメイン定義
D1 KnowledgeAn awareness of the existence of something
D2 SkillsAn ability or proficiency acquired through practice
D3 Social/professional role and identityA coherent set of behaviors and displayed personal qualities of an individual in a social or work setting
D4 Beliefs about capabilitiesAcceptance of the truth, reality, or validity about an ability, talent, or facility that a person can put to constructive use
D5 OptimismThe confidence that things will happen for the best or that desired goals will be attained
D6 Beliefs about consequencesAcceptance of the truth, reality, or validity about outcomes of a behavior in a given situation
D7 ReinforcementIncreasing the probability of a response by arranging a dependent relationship, or contingency, between the response and a given stimulus
D8 IntentionsA conscious decision to perform a behavior or a resolve to act in a certain way
D9 GoalsMental representations of outcomes or end states that an individual wants to achieve
D10 Memory, attention and decision processesThe ability to retain information, focus selectively on aspects of the environment and choose between two or more alternatives
D11 Environmental context and resourcesAny circumstance of a person’s situation or environment that discourages or encourages the development of skills and abilities, independence, social competence, and adaptive behavior
D12 Social influencesThose interpersonal processes that can cause individuals to change their thoughts, feelings, or behaviors
D13 EmotionA complex reaction pattern, involving experiential, behavioral, and physiological elements, by which the individual attempts to deal with a personally significant matter or event
D14 Behavioral regulationAnything aimed at managing or changing objectively observed or measured actions

結果の報告

本レビューではまず採択された文献の基本的な特徴について記述した. その後,質的データの語りまたはコードを TDF にマッピングした結果を報告した.マッピングされた阻害要因および促進要因は結果の出現頻度に応じて TDF のドメインごとに分類してナラティブに記述し,どの領域に促進要因・阻害要因が集中しているかを明示した.

再帰性

JBI の質的研究のシステマティックレビューのガイドラインをもとに下記の視点で定期的にチームディスカッション等を実施し,再帰性を維持するように努めた.28

  • 1. 個人的再帰性: SK は臨床現場での IPW の臨床及び研究経験をもとに本研究を構想. 自らの経験が分析に過度に影響しないよう,データ抽出・分析過程で定期的にメモを作成.

  • 2. 対人関係的再帰性: レビュー過程では,3 名の査読者間での専門性の偏りや力関係の影響を防ぐため,意見の不一致時には第三者の視点を用いて合意形成を行った.

  • 3. 方法論的再帰性: TDF の枠組みを採用した背景の選定理由を分析プロトコール内に明記.

  • 4. 文脈的再帰性: 日本社会特有の医療文化 (年功序列,上下関係,遠慮)を文脈要因として意識し,それが参加者の語りや結果解釈にどう影響するかを検討した.

Results

採用された文献の属性

本レビューでは医中誌 Web,CiNii Articles,J-STAGE を用いたデータベース検索により 5051 件の文献が特定された.タイトルおよび抄録による一次スクリーニングを経て,適格性評価が必要と判断された文献についてフルテキストレビューを行った. その結果,最終的に 34 件が本レビューに採択された(図1). IPW の阻害・促進要因に関する内容がない,語りの一部に IPW および IPW の阻害・促進要因に関する語り・コードがあるのみで,IPW を中心とした内容でないことが研究に組み入れられなかった文献の主な除外理由であった. 本レビューに組み入れられた 34 件の研究の特徴を表3に示す.質的研究データの収集方法として半構造化インタビューが最も多く用いられており,次いでグループインタビュー,その他にも自己記入式質問紙調査,ワールドカフェ,グループディスカッションが用いられていた.その内,3 件はグラウンデッド・セオリー・アプローチとして実施されていた. 質的データの分析方法については,質的内容分析が最も多く用いられていた. 研究参加者の職種は,看護職を含む文献が最も多く,次いで医師,介護職やリハビリ専門職が含まれている文献が多かった. IPW の阻害・促進要因について語られた研究参加者の所属施設の領域については多様であり,在宅 (訪問介護・訪問介護等),介護関連施設,急性期病院が多かった. 一方で,地域包括支援センターや重症心身障害施設の領域も含まれていた. CASP 基準を用いた質的研究の研究の質評価について,29 件が高品質,5 件が中程度品質であり,倫理審査の不記載,研究参加者リクルート方法の妥当性,研究者と参加者の関係性や研究者自身の立場についての不明確さによって多くは減点されていた(表4).

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図1. Preferred Reporting Items for Systema c reviews and Meta-Analysis (PRISMA) フローダイアグラム.

表3. 研究の特徴 (n = 34).

項目 n
質的データの収集方法
 半構造化インタビュー24
 グループインタビュー (フォーカスグループ含む)6
 自己記入式質問紙調査2
 ワールドカフェ1
 グループディスカッション1
 グラウンデッド・セオリー・アプローチ3
質的データの分析方法
 質的内容分析24
 KJ法5
 SCQRAM1
 テキストマイニング1
研究参加者数, 平均 (範囲)25.8 (3–245)
研究参加者の職種
 看護師/医師/ソーシャルワーク職/介護職/作業療法士/理学療法士21/9/9/8/8/7
 薬剤師/歯科医師/栄養管理職/保健師/臨床心理士/歯科衛生士7/4/4/4/3/3
 言語聴覚士/相談員/事務職/柔道整復師2/2/2/2/1
参加者の経験年数
 5〜10 年を含む16
 10〜20 年を含む15
 20 年以上6
 経験年数の記載なし11
研究参加者の所属施設の領域
 在宅 (訪問看護・訪問介護含む)/介護関連施設/急性期病院13/10/7
 一般病院/専門病院・デイケア/地域包括・行政/重症心身障害児施設6/5/5/1

表4. The Critical Appraisal Skills Programme (CASP) による各研究の評価.

著者, (年)AimsQualitative methods appropriateConnection to theoretical frameworkRecruitment strategyData collectionReflexivityEthical issuesData analysisClear statement of findingsValue of research Total score #
野崎ら, (2007)1110.510.501118
田中ら, (2010)1110.510.501118
本田 (可) ら, (2012)1110.510.511119
坪倉ら, (2013)1110.510.511119
依田ら, (2014)1110.510.511119
澤田ら, (2014)1110.510.501118
須田ら, (2014)1110.510.511119
蒔田ら, (2015)1110.510.511119
中岡ら, (2016)1110.510.511119
平川ら, (2017)1110.510.511119
九津見ら, (2017)1110.510.511119
穂高ら, (2017)1110.510.511119
本田(芳) ら, (2017)1110.510.501118
成瀬ら, (2018)1110.510.511119
北井ら, (2018)1110.510.511119
杉本ら, (2018)1110.510.501118
小山 (裕) ら, (2019)1110.510.511119
小山 (道) ら, (2019)1110.510.511119
劔持ら, (2019)1110.510.511119
細井ら, (2019)1110.510.511119
交野ら (第2報), (2020)1110.510.511119
交野ら (第3報), (2020)1110.510.511119
木村ら, (2020)1110.510.511119
増田ら, (2021)1110.510.511119
原田ら, (2021)1110.510.511119
飯盛ら, (2022)1110.510.511119
伊藤 (朱) ら, (2023)1110.510.511119
和田ら, (2023)1110.510.511119
森木ら, (2023)1110.510.511119
植田ら, (2024)1110.510.511119
梅津ら, (2024)1110.510.511119
大桃ら, (2024)1110.510.511119
樋口ら, (2024)1110.510.511119
伊藤 (佳) ら, (2025)1110.510.511119

結果の要約

採択された 34 件の文献から抽出された IPW の促進・阻害要因に関する語り・コード 736 件が,TDF の 14 ドメインにマッピングされた. IPWの促進・阻害要因に関する語りが多くマッピングされた TDF ドメインはEnvironmental Context & Resources,Social Influences,Social/Professional Role & Identityであり,これらの環境や対人関係等の外的な要素に対するドメインは全体の65.6%を占めた(図2).次いで,個人の理解や行動調整に関わるドメインである Knowledge や Behavioral Regulation, Beliefs about consequences, Skills, Beliefs about capabilities, Goals にそれぞれ 5–10% 程度の語りが分類された. Emotion, Intentions, Motivation and Goals などの感情や内的動機に関するドメインに関する語りは最も少数であった. 各ドメインの代表的な語り・コードを表 5 に示す.

表5. Theoretical Domains Framework (TDF) における各ドメインの代表的な語り(n = 736).

TDFドメイン(n, %)代表的な語りまたはコード (著者,出版年)
Environmental context & resources (n = 190, 25.8%)阻害要因
「お互い多忙で連絡が取りにくい」[須田ら, 2014]
「(介護職は)看護職の人数の不足を問題としていた」[野崎ら, 2007]
「日々の業務の中で他職種と連絡を取るには方法が決まっていない」[蒔田ら, 2015]
促進要因
「多忙な職種はタスクシフトシェアを実施して同一職種に負荷がかからないよう役割を分散する」[大桃ら, 2024]
「病棟ごとの支援スタッフ配置やACP支援チームラウンドなどACPを継続するサポート体制が整っている」[大桃ら, 2024]「ケースによっては連携ノートを作り活用しています」[須田ら, 2021]
Social influences (n = 146, 19.8%)阻害要因
「他職種の状況が分からないので,連絡をとるタイミングに気を遣う」[成瀬ら, 2018]
「価値観とか視点がぶつかって対立してしまうことで,連絡が取りにくくなるとか,話し合いの場で対等に意見交換ができなくなる」[梅津ら, 2023]
「介護職の中で,こんなことをナースさんに聞いちゃっていいのかなとか … 」[蒔田ら, 2015]
促進要因
「普段の何気ない会話があって,それがあるからこそ仕事の相談もしやすいかなと思います」[植田ら, 2024]
「「互いに声かけができている」「相手を配慮した声かけをする」「感情的にならないで傾聴する」」[野崎ら, 2017]
「介護職を否定せず報告に対応する」[蒔田ら, 2015]
Social/professional role & identity (n = 135, 18.3%)阻害要因
「医師に叱られるから医療に近寄って行かないケアマネジャーがいる」[平川ら, 2017]
「話し合いが十分されない,上下関係になってしまい,「言いにくい」「言っても無駄」という意見から専門性が十分発揮できないジレンマ」[野崎ら, 2007]
「各職種間の守備範囲を意識するあまり,思う様に意見交換できないことがある」[成瀬ら, 2018]
促進要因
「看護師に否定されないから相談できる」[蒔田ら, 2015]
「看護師と医師が対等な立場にある」[本田 [可] ら, 2012], 「専門職としての見解を述べ交渉する姿勢を各職種がもつ」[大桃ら, 2024]
「チームで取り組む以上はいろいろな人が責任を持って意見を出し合って、患者さんやご家族にとって一番よい答えを模索したい」[杉本ら, 2018]
Knowledge (n = 62, 8.4%)阻害要因
「地域包括支援センターが歯科衛生士に何を期待しているのかが分からない」[平川ら, 2017]
「どこまでを理解されていてどこまでを話をして良いのか考えて,結局話さずに終わってしまうことがある」[成瀬ら, 2018]
促進要因
「ホームヘルパーのできることを理解してくれたら連携はさらに良くなる」[増田ら, 2021]
「現場の職員全員で勉強会を行う」[野崎ら, 2007]
Behavioral regulation (n = 49, 6.7%)阻害要因
「介護職の報告のタイミングが遅い事が挙げられていた」[野崎ら, 2007]
促進要因
「ため込まずにその場でタイムリーに調整する」[伊藤 [佳] ら, 2025]
Skills (n = 41, 5.6%)阻害要因
「その人の能力の差はものすごく感じていて,もともとコミュニケーション能力が足りないっていう人は,なかなかこちらの意図していることが伝わりにくい感じはあります」[依田ら, 2014]
促進要因
「生活支援員にとって,わかりやすい言葉づかいをする」[伊藤 [佳] ら, 2025]
Beliefs about consequences (n = 35, 4.8%)阻害要因
「訪問看護師の仕事について特に医療依存度の高い人のケアでは,アセスメントやそれに基づいた看護援助などが理解されず,ずれを感じる」[依田ら, 2014]
促進要因
「理念上または経験上「連携」の有効性を理解している」[田中ら, 2010]
Beliefs about capabilities (n = 31, 4.2%)促進要因
「自分だけではどうにもならないと認識する」[伊藤 [佳] ら, 2025]
阻害要因
「多分僕ら (医師)がやったほうが知識レベルが高いので、直接やってることが多い」[久津美ら, 2017]
Emotions (n = 23, 3.1%)阻害要因
「相手がどのような人か分かりにくいので意見が変なふうにとらわれないかと心配」[成瀬ら, 2018]
Goals (n = 18, 2.4%)促進要因
「今後の方向性の見立てを多職種で共有してチーム内の足並みをそろえて早期から介入する」[大桃ら, 2024]
Motivation and Goals (n = 4, 0.5%)阻害要因
「両者共に専門性を発揮しようとする意欲がないという意見であった」[野崎ら, 2007]
Intentions (n = 2, 0.3%)阻害要因
「拒絶・抵抗感」[梅津ら, 2024]
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図2. Theoretical Domains Framework の各ドメインにマッピングされた多職種連携の阻害要因および促進要因の分布.

脚注:斜線の棒,阻害要因;白抜きの棒,促進要因.

Environmental context & resources

阻害要因・促進要因を合わせて 190 件 (25.8%) が分類された Environmental Context & Resources には多忙や人員不足により職種間の情報交換やミーティングの時間を確保することが困難であることおよび連絡手段や情報共有ツールの不足が阻害要因として語られていた.3335 一方でそれらの阻害要因に対応する業務調整による時間確保,適切なスタッフの配置,連絡ノートの活用などが IPW の促進要因として語られていた.33,36

Social influences

146 件 (19.8%) が特定された Social Influences については,具体的には相手が忙しそうだという推測に基づく連絡の躊躇,価値観の違いによる対立および意見交換の困難さ,「こんなことを聞いてよいのか」という他職種への情報確認や相談の抑制が語られていた.15,35,37 一方で,日常的な雑談を用いた関係構築,他職種への状況理解や相互支援,心理的安全性への配慮が促進要因として特定された.34,35,38 本ドメインでは阻害要因に比べて促進要因の語りが著明に多く特定された (阻害要因, n = 61; 促進要因, n = 85).

Social/Professional role & identity

本ドメインには 135 件 (18.3%) が分類された. 阻害要因としては,職種間の上下関係やヒエラルキーの存在による意見の表明しにくさ,多職種連携時の叱責や否定的な対応への懸念から他職種との関わりを回避する傾向,各職種の守備範囲を意識するあまり連携が困難となる状況が語られていた.15,34,39 一方で,看護師や医師を含む各専門職が対等な立場として認識されること,専門職としての見解を述べ交渉する姿勢を有すること,およびチームとして責任を共有し患者・家族にとって最善の方針を模索する姿勢が本ドメインにおけるIPWの促進要因として特定された.35,36,40,41

Knowledge

62 件 (8.4%) が分類された Knowledge には阻害要因として他職種に対して何を期待されているのかが分からないことや,相手の理解度が不明なため説明や相談を控えてしまう状況が語られていた.15,39 一方で,各職種の役割や専門性に対する理解の深化,および職場内での勉強会などを通じた知識共有が促進要因として特定された.34,42

Behavioral regulation

本ドメインには 49 件 (6.7%) が分類され,阻害要因としては情報共有や判断調整が適切なタイミングで行われないことや,他職種に対して拒否感・抵抗感が生じることにより,連携行動が滞る状況が4件のみ語られていた.34 その他 45 件は促進要因であり,情報をため込まずに共有する,現場を共に確認する,意見の相違時には調整や譲歩を行う,相手の意図を確認した上で伝え方を工夫するなど,対人関係や状況に応じて自ら行動を調整する語りが抽出された.43

Skills

本ドメインには 41 件 (5.6%) が分類され,阻害要因としては専門職間でのコミュニケーション技能の個人差が大きいことや,情報共有や判断の質にばらつきが生じている状況が語られていた.44 また,ケアが個人の力量や専門性に委ねられていることも阻害要因として抽出された.45 一方で促進要因としては,相手職種の理解度に応じて言葉遣いや伝え方を調整する,専門用語を避けて具体的に説明する,連携相手の習得状況を見ながら段階的に指導するなど,相手に合わせて技能を使い分ける実践的コミュニケーション能力が多く語られていた.35,43

Beliefs about consequences

本ドメインには 35 件 (4.8%) の語りが分類され,阻害要因として多職種間での連携や支援の結果に対する期待や認識の相違が語られていた.具体的には,看護師のアセスメントや判断が十分に理解・共有されないことによって連携が困難となる懸念,退院準備や支援計画が十分に反映されないことによる支援の形骸化などが挙げられていた.41,44 また,ケアの補助者導入に伴う看護の質向上および看護師自身のスキルアップに対する否定的予測が阻害要因として特定された.45 一方で促進要因としては,訪問看護や多職種介入によりケア実践の安心感が高まること,連携によって望ましい結果が得られるということが主に語られていた.42,46

Beliefs about Capabilities

Beliefs about Capabilitiesには 31 件 (4.2%) が分類され,阻害要因としては医師や医療職とその他専門職間の知識水準の差により,IPW が阻害されている状況が語られていた.35,47 また,終末期において「患者にできることも少なくて看ているのが辛い」と感じる無力感も阻害要因として抽出された.35 一方で促進要因としては,自身一人では対応できないことや単独の専門職で完結できる支援には限界があることを認識することが促進要因として特定された.33,43

Emotions, Goals, Motivation and Goals, Intentions

環境や対人関係,結果に対する信念といった外的な要素に対する語りに比べて Emotions, Intentions, Motivation and Goals の感情や内的動機といった内的要因に関するドメインの語りは少なかった. Emotionsには 23 件 (3.1%) が分類され,主に相手の人柄や受け止め方が分からないことによる不安や懸念が阻害要因として抽出された.15,35 Goals には 18 件 (2.4%) が分類され,多職種間で目標や今後の方針を共有することおよびその欠如が阻害・促進要因の大部分を占めた.36,48 Motivation and Goals, Intentions はそれぞれ 4 件,2 件のみが分類された. Intentions および Motivation and Goals では,多職種連携に対する不信感による多職種連携の抵抗感や意欲の低さが阻害要因として語られていた.34,37

Discussion

データベース検索によって特定された 5051 件をスクリーニングし,最終的に 34 件の質的研究の文献が本研究に組み入れられた. IPW の促進・阻害要因に関する語り・コード 736 件を TDF ドメインに分類した結果,Environmental context & resources のドメインにおける時間的制約・人材不足・連絡手段の制限,Social influences のドメインにおける相手が忙しそうだという推測に基づく連絡の躊躇,対立回避のための萎縮,他職種への情報確認や相談の抑制,Social/professional role and identity のドメインにおける職種間のヒエラルキーや役割不明瞭さが頻出の阻害要因であった.一方でこれらを解消しようとする内容が頻出の促進要因であった.これら語りが多くマッピングされた頻出のドメインのうち,Social influences のみ阻害要因に比べて促進要因が著明に多く,相手を気遣う配慮,協調性の尊重,対立回避が促進要因の語りとして多く特定された. これらの環境や対人関係等の外的な要素に対するドメインに比べて,個人の理解,行動調整,感情,内的動機といった個人の要素に関する語りは少なかった.

Environmental context & resources,Social/professional role and identity の 2 つが IPW の阻害要因・促進として多くの語りがマッピングされた頻出の TDF ドメインであったことは海外の先行研究と一致していた.49 本研究において最も分類された語りが多くかつ阻害要因が頻出であった Environmental context & resources については,海外のプライマリケア領域での IPW の阻害・促進要因を検討したシステマティックレビューにおいても本研究と同様に時間,人材,連絡手段が頻出の IPW の阻害要因として特定されていた.49 IPWについてだけでなく,患者に対する医療者のアルコール消費量のスクリーニング行為に関する阻害要因やプライマリケア領域におけるエビデンスにもとづく医療の阻害要因といった医療全般において Environmental context & resources は阻害要因の上位を占める傾向がある.50,51 したがって,IPW および日本に固有の阻害要因ではなく,Environmental context & resources は世界的に共通する医療全体が抱える基盤的な阻害要因と考えられる.

職種間のヒエラルキーや役割の不明確さが頻出の阻害要因であった Social/professional role and identity については,海外の IPW 研究でも同様の阻害要因が報告されている. プライマリケア領域および手術室における IPW に関する質的研究においても,階層や専門職間の役割の不明確さなどがチームワークの阻害要因で あると報告されている.52,53 日本においては海外と比べて特に職種間のヒエラルキーが強い可能性がある. オーストラリアで看護師として勤務する日本人看護師を対象とした質的研究では,オーストラリアに比べて日本では医師の権威が強く,日本における看護師は医師の下でケアを行う文化が深く根付いているため看護師の裁量性が小さいと感じていることが報告されている.54 役割の不明確さとこの職種間のヒエラルキーおよびの両方が阻害要因となっている点は,個人間の役割および専門職職種間の立場を明確にすべきなのかまたはすべきではないのかという点で矛盾しているように考えられるが,これらはそれぞれ別の要因として考える必要がある.理由としては,役割の不明確さは放置および判断を避けることにつながり,職種間のヒエラルキーは発言の抑制・コミュニケーションの低下につながるという別々の機序によって IPW が阻害されるためである.55,56 役割の不明確さについて,先行研究ではチームワーク自体を専門職の役割の一部として捉えることが IPW の促進要因でとされていることから,本ドメインの語りとして抽出された「チームで取り組む以上はいろいろな人が責任を持って意見を出し合って,患者さんやご家族にとって一番よい答えを模索したい (杉本ら, 2018) 」,「専門職としての見解を述べ交渉する姿勢を各職種がもつ (大桃ら, 2024) 」のように,不明確さを放置せずチームワークおよび発言を専門職の役割として促すトレーニングが本ドメインへの介入として必要と考える.52 専門職間のヒエラルキーについては心理的安全を高めるためのリーダーのインクルーシブな態度や環境および個人の発言スキルのトレーニングが重要と報告されているためこれについても介入に組み入れる必要がある.56

語り・コードが頻出であった上位の TDF ドメインの内,Social Influences のみ阻害要因に比べて促進要因の語り・コードが著明に多く,海外とドメインに含まれる内容が大きく異なっていた. Social Influences は 「Those interpersonal processes that can cause individuals to change their thoughts, feelings, or behaviors」と定義され,上司や同僚等の自分にとって重要な他者が「その行動をすべきだと思っているか」といった他者からの期待や評価,プレッシャー等が含まれる.32 この Social Influences のドメインの阻害要因として相手を気遣うことによる遠慮,対立回避に対応する形で相手を気遣う配慮,協調性の尊重,対立回避といった促進要因が著明に含まれていた点は,チームに不和を生じさせることを避けることを重視するという日本の先行研究の結果と一貫していた.57 Omura らは,「他人の権利を尊重しながら自分の権利を守ることを基本に,無理なく自分を表現するためのコミュニケーション能力」を意味するアサーティブなコミュニケーションに対して日本の文化や価値観がどのように影響するかについて日本人看護師を対象に検討した.その結果,自分と同じグループに所属する人とは自由に話せるが顔の知らない医療従事者とは話しづらいといった「ウチとソト」の価値観や反対意見を述べることや対立を避けるといった「和」の価値観がアサーティブなコミュニケーションに大きく影響していたと報告している.58 指導者に対して反対意見を述べることに関して,指導者との関係性・人柄を重視し,相手の立場を尊重した上で建設的な反対意見を述べるといったことが日本人において特徴的であると,米国および日本の研修医を直接比較した研究で報告されている.59 本研究においてもそれら日本での「和」の価値観の重視性によって阻害要因に比べて促進要因の語り・コードが著明に多くなったと考えらえれる. 本ドメインの阻害要因の語りである「介護職の中で,こんなことをナースさんに聞いちゃっていいのかなとか … 」35 という語りについては一部ヒエラルキーの要素を含んでいるが,同じ職場で不確かなことがあった場合においても確認しなくなる暗黙の了解という日本の文化的側面が影響していると考えられる.60 一方で海外の先行研究においては,他者のパーソナリティに対する調整の困難さや関係性が浅いチームメンバーとのぎこちなさが IPW における Social Influencesドメインの阻害要因として報告されおり,遠慮や対立回避が頻出する本研究の結果とは異なっている.52 したがって,協調性を重んじる集団主義的文化は Social Influences として日本特有の IPW の大きな阻害・促進要因であると考える.

IPW の主要な阻害・促進要因として考えられる Environmental context & resources, Social influences, Social/professional role and identity のドメインを改善するために,本研究で特定された促進要因および行動変容技法を用いて介入戦略を作成することで IPW の実装がより促進される. 行動変容技法とは行動を引き起こすプロセスを変化させるために,根拠にもとづき体系的に設計される観察可能かつ再現可能な具体的な要素であり,例としてフィードバック,セルフモニタリング等がある.61,62 先行研究の方法論にもとづき下記の方法で介入戦略を作成することが可能となる; 1) 専門家によって TDF に割り当てられた行動変容技法の対応表をもとに,ドメインごとに行動変容技法の候補を抽出する,2) 質的研究で抽出された促進要因および研究チームとの合意形成をもとに介入に組み入れる行動変容技法を選定する,3) パイロット研究を実施し実装および実行可能性を評価する. 具体例として本研究の IPW の阻害要因として本研究で特定された相手を気遣うことによる遠慮,対立回避,沈黙といった Social Influences のドメインに関する行動変容技法を考える. Social influences の TDF ドメインに対応する行動変容技法として Social comparison, Social support or encouragement, Information about others’ approval, Social support (emotional), Social support (general), Vicarious reinforcement, Modelling or demonstrating the behaviour が挙げられている.63 これら Social influences の TDF ドメインに対応する行動変容技法のなかで,本研究の Social influences における促進要因として特定された「何気ない会話・声かけ」は Social support (general), 「傾聴・感情的にならない」は Social support (emotional),「否定しない対応」は Information about others’ approval という行動変容技法に対応させてよいか否かを研究チームで合意形成する.その後,Information about others’ approval については「相談・発言することは IPW チームとして望ましい行動であるという合意文を会議資料や記録様式に明記する」という形で行動変容技法を具体的に IPW に組み入れることを研究チームで検討した後,パイロット研究を行う.

多くの語り・コードがマッピングされた環境や対人関係等の外的な要素に対するドメインに比べて,個人の理解や行動調整に関わるドメインである Knowledge, Behavioural regulation, Beliefs about consequences, Skills, Beliefs about capabilities, Goals に分類された語りが少なったことは,本研究が災害や手術室等の特殊な環境下での文献を除外し,一般的な急性期 ~ 慢性期等の臨床現場における IPW を文脈としていたことが影響したと考える.手術室における IPW の阻害・促進要因を TDF によって検討した海外の研究では,機序については言及されていないが感情や行動調整に関する語りが高頻度で報告されている.手術室が複雑かつ急速に変化する環境である上に,最もフラストレーションやストレスといった感情が表出される場所であることから,感情およびリーダーシップといった行動調整が注目されるためと考えられる.64 これに対して本研究で対象とした急性期 ~ 慢性期の臨床現場での IPW の文脈では IPW の困難さが急速かつ強固に生じるというよりも,時間的制約,人員配置,役割の不明確さ,職種間関係といった日常的かつ構造的な要因として反復的に経験される特徴がある.65 その結果として個人の理解や行動調整ではなく,環境や対人関係等の外的な要素がより多く特定されたと考える. Emotions, Intentions, Motivation and Goals といった感情や内的動機に関する TDF ドメインは,個人の内的動機や感情に関わる要因であり,インタビュー設計や分析焦点によっては十分に顕在化しにくい可能性がある.介護ケア領域における感染対策の阻害・促進要因について TDF を用いたスコーピングレビューにおいても Emotion や Intentions を含む Motivation 領域の決定因子は他のドメインと比較して報告数が少なく,限定的な記述にもとづいてコード化されていた.66

本研究は日本の臨床現場における IPW をテーマとした質的研究を TDF によって用いて体系的にレビューし,多職種連携の障壁と促進要因を整理した初めての研究である. TDF の枠組みにより IPW の阻害および促進要因を体系的に TDF へマッピングしたことで,根拠にもとづいた観察可能かつ再現可能な行動変容技法としての介入設計に繋がるという点が本研究の強みである. 一方で,本研究にはいくつかの限界がある. 一つは,本レビューで対象とした文献の研究参加者の職種や IPW の場面・文脈に偏りがある可能性がある. 実際に,研究参加者に看護職を含む研究および急性期病院や在宅医療を中心とした文脈の研究が多く,一部の職種および地域包括支援センター等の一部の実践場面については知見が限定的である可能性がある. 二つ目は,本研究は既存の質的研究を対象としたシステマティックレビューであるため,各研究に含まれる語りや経験は,IPW に関わるすべての関係者の意見や経験を代表するものではなく個別の現場にそのまま一般化することは困難である.しかし,TDF によって特定された阻害・促進要因を用いて行動変容技法や介入設計への理論的な橋渡しをする点に本研究は意義がある.20 三つ目として,再現性が制限されている可能性が挙げられる. 本研究では各文献から抽出された語りや一次コードを本レビューの研究者 (SK) が TDF の各ドメインにマッピングした上で出現頻度をもとにナラティブに統合した.各ドメインから抽出されたテーマの記述や解釈には,原著論文の著者の分析視点に加え,本レビューにおける研究者 (SK) の解釈が影響している可能性がある.

Conclusion

日本の臨床現場における IPW では知識や行動調整といった専門職者個人に起因するものではなく,時間的制約や人員配置といった外的環境,職種間の上下関係や役割認識に基づくヒエラルキー,さらに対立回避や和を重んじる集団主義的文化といった,構造的かつ日本特有の文化的要因が IPW に対する阻害・促進要因として大きく影響することが本研究より示唆された.今後は本研究で特定された阻害・促進要因に対応する行動変容技法を組み込んだ介入や教育プログラムを実装科学の手法を用いて設計し,日本の臨床現場の文脈に即した IPW の実装可能性および有効性を検証する.

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Kawachi S, Kato T, Aono D et al. Barriers and Facilitators to Interprofessional Work in Clinical Settings in Japan: A Systematic Review of Qualitative Research [version 1; peer review: awaiting peer review]. F1000Research 2026, 15:765 (https://doi.org/10.12688/f1000research.178185.1)
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